古生物学:Vampyropoda分岐群に属する動物の最古の化石が見つかった
Nature Communications
2022年3月9日
約3億3000万~3億2300万年前のものとされる、10本の腕を持つタコの化石が新たに発見されたことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この化石は、コウモリダコやタコの最古の祖先と考えられており、ジョー・バイデン米国大統領の名前にちなんでSyllipsimopodi bideni と命名された。
Vampyropoda分岐群に属する動物は、コウモリダコやタコの祖先に当たるが、体の大部分が軟組織であるために化石化することがほとんどなく、起源が明確になっていない。これまでに発見された断片的な遺骸は、約2億4000万年前のものと推定されているが、遺伝的データは、それよりはるか以前の3億3000万~2億5000万年前にVampyropoda分岐群の動物が出現したことを示していた。
今回、Christopher WhalenとNeil Landmanは、ミシシッピ紀のベアガルチ・ラーゲルシュテッテン(米国モンタナ州)で発見されたVampyropoda分岐群の新種の化石について報告している。この化石標本は、約3億3000万~3億2300万年前のものと年代決定され、この分岐群のこれまでで最古の化石となった。著者たちは、Vampyropoda分岐群の起源が約8200万年さかのぼり、遺伝的証拠と矛盾しない時系列に近づいたと示唆している。この化石標本は保存状態が良好で、体長が約12センチメートル、10本の腕があり、吸盤、ひれ、長い軟甲(三角形の硬い内部構造)が見られると報告されている。著者たちは、こうした特徴から、この化石標本の動物が、イカに似た魚雷形だったという考えを示しており、バイデン第46代米国大統領に敬意を表して、Syllipsimopodi bideni と命名した。
著者たちは、今回の研究によって、Vampyropoda分岐群に属する動物の進化に関して、過去の解析結果が見直され、これまで以上に詳細な解析が行われたという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-022-28333-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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