がん治療:CAR T療法による初期治療はハイリスク大細胞型B細胞リンパ腫の転帰を改善できるかもしれない
Nature Medicine
2022年3月22日
がん性B細胞のCD19表面タンパク質を特異的に標的とするCAR T細胞療法の1つのアキシカブタゲン・シロルユーセルを用いる初期治療によって、ハイリスク大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の患者37人の78%で完全奏効が得られた。このタイプのCAR T細胞療法では管理可能な安全性プロファイルも示されており、今回の知見は、これまで使われてきた段階よりも早い段階でこの手法を使用した方が臨床的に有益である可能性を示唆している
ハイリスクLBCLは、特定の遺伝子変異や臨床的属性、あるいはこれらの組み合わせを特徴とする血液がんの一種で、標準的な化学免疫療法の最初の数回では、患者にほとんど奏功が見られない。アキシカブタゲン・シロルユーセル(axi-cel)はCAR T細胞療法の一種で、患者自身の免疫細胞(この場合はT細胞)を実験的に改変して、がん細胞を認識して攻撃する能力を高める免疫療法である。axi-celは、免疫細胞(がん性B細胞)に発現する表面タンパク質CD19を標的としており、治療後期のB細胞リンパ腫患者への使用がすでに承認されているが、ハイリスクLBCLの初期治療法としての可能性はまだ検討されていない。
今回、S Neelapuたちは、ハイリスクLBCLの成人患者40人(年齢中央値61歳、男性68%)を対象として、初期治療としてのaxi-celの第2相臨床試験を実施した。この臨床試験は単群試験で、参加者全員が治療を受けた。有効性解析の対象となった37人の患者のうち、78%が臨床試験の主要評価項目である完全奏効を達成した。データカットオフ時点(追跡期間中央値15.9か月)では、奏効期間、無増悪生存期間、無再発生存期間の中央値には達していなかった。有害事象は、axi-celについて以前に報告されたものと整合していた。
この臨床試験の結果は、CD19を標的とするCAR T細胞を疾患治療の初期段階で使用することについて、さらなる試験を実施すべきことを裏付けている。しかし、大規模無作為化試験でフォローアップを行い、標準的な化学免疫療法との直接比較を行うことが必要だ。
doi:10.1038/s41591-022-01726-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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