天文学:天の川銀河の進化を解明する
Nature
2022年3月24日
天の川銀河は、約130億年前に円盤状の恒星集団が形成されたことから始まり、さまざまな段階を経て進化してきた可能性があることを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、約25万個の恒星の正確な年代推定から得られたもので、特に天の川銀河の形成の初期段階における、銀河の集積の歴史についての理解を深める。
天の川銀河がどのように形成されたかを解明するには、大量の恒星のサンプルの正確な年齢を知る必要があり、一番古い恒星は約140億歳にも及ぶ。準巨星の進化段階にある恒星は、正確な星の時計とされ、天文学者たちは、その明るさに基づいて、短い準巨星段階における恒星の年齢を直接、正確に測定できる。しかし、この進化段階は長く続かないため、準巨星が観測されることは比較的まれで、これまで大規模な観測結果がなかった。
今回、Maosheng XiangとHans-Walter Rixは、天の川銀河の集積の歴史を調べるために、欧州宇宙機関(ESA)のガイア宇宙望遠鏡と中国のLAMOST望遠鏡の観測データを用いて、天の川銀河の広大な空間に分布する準巨星段階の恒星約25万個を特定した。著者たちは、それぞれの恒星の年齢を推定し、約15億~138億歳の範囲にあることを明らかにした。著者たちは次に、円盤部分とハローの恒星集団のさまざまな構造要素の起源を特定し、その特徴を明らかにした。今回の知見から、分厚い円盤の形成は、ビッグバンからわずか8億年後の約130億年前にすでに始まっていたことが示唆された。著者たちは、銀河ハローの内側の集積が、ガイア-エンセラダス銀河と古代の天の川銀河の合体によって進み、20億年後に終了したと計算している。それとほぼ同時期に、分厚い円盤中のほとんどの恒星がバーストによって形成されたと考えられる。
著者たちは、これらの恒星の年齢、組成、動きは、天の川銀河の形成に関わる動的過程を浮き彫りにしていると主張している。関連するNews & Viewsでは、Timothy Beersが、天の川銀河に含まれる大量の恒星のサンプルのデータがさらに多く得られれば、天の川銀河の形成過程の解明が必ず進むだろうという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-022-04496-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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