神経科学:育った環境がナビゲーション能力に与える影響
Nature
2022年3月31日
都市部以外で育った人々は、都市環境(特に道路が格子状に整備されている地域)で育った人々よりもナビゲーション(移動において適切な経路を選択すること)がうまい可能性があることを示唆した論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、格子状に整備された街路などの都市設計と我々の環境が、認知能力と脳機能に影響を及ぼすことを示している。
これまでの研究から、脳の構造と機能が経験によって形作られることが示唆されている。例えば、人間の認知能力やメンタルヘルスは、その人の環境の文化的特性や地理的特性の影響を受ける。しかし、成長期の環境が後年の認知能力に及ぼす影響については、まだ十分に解明されていない。
今回、Antoine Coutrot、Michael Hornberger、Hugo Spiresたちは、2種類のテレビゲームに組み込まれた認知課題を用いて、38か国の39万7162人の空間ナビゲーション能力を測定した。参加者は、出発地点といくつかのチェックポイントの場所を示した地図を決められた順序で提示された。その結果、構造化の度合いが高く、格子状に整備された都市(例えば、米国シカゴ)で育った人は、規則性のある配置のゲームレベルでの成績が良かった。これに対して、都市部以外や規則性の低い配置の都市(例えば、チェコ共和国・プラハ)で育った人は、複雑度の高いゲームレベルでのナビゲーションの成績が高かった。
今回の知見は、人々が育った環境(特に街路の構造)がナビゲーション能力に影響を及ぼし、育った場所と構造的に類似した環境でのナビゲーションの成績が高いことを示唆している。これらの違いが小児期にどのように表れるかを調べるためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41586-022-04486-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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