環境:1960年以降のヨーロッパにおける高潮の評価
Nature
2022年3月31日
ヨーロッパでは1960年以降に極端な高潮が増加しており、それらは同時期の海水準の上昇に匹敵するものだったことを示唆した論文が、Nature に掲載される。この知見は、極端な高潮の発生件数は増えないとする現在の仮説と矛盾しており、沿岸地帯の計画に影響を与える可能性がある。
高潮(暴風雨によって引き起こされる海水準の変化)の結果として発生する洪水は、世界経済に毎年数十億ドルの損害を与えており、効果的な介入がなければ、海水準の上昇に伴って増加する可能性が高い。効果的な介入を設計するには、暴風が高潮の発生にどのように影響するか、また平均海水準の変化がこれらの事象のベースラインにどのように影響するかを理解する必要がある。これまでの研究から、海水準の上昇によって極端な海水準事象の発生可能性が高まっていることが示唆されたが、極端な高潮の役割については議論が続いている。
今回、Francisco Calafatたちは、統計的モデル化手法を用いて、1960~2018年にヨーロッパの大西洋と北海の沿岸地域に設置された79台の潮位計による極端な高潮の観測値を解析した。その結果、極端な高潮の傾向が、平均海水準の上昇について観測された傾向に匹敵することが明らかになり、気候の内部変動と人為的影響がこの傾向に影響していることが示された。Calafatたちは、高潮に対する人為的影響の大きさは、北大西洋の暴風雨の東方への拡大を示す気候モデルと整合しており、英国や中央ヨーロッパでの暴風の増加につながる可能性があるという考えを示している。
Calafatたちは、今回の知見は、内部要因と外部要因の両方が極端な高潮の起こりやすさに影響を与える可能性があることを示していると結論付けており、極端な高潮のパターンが変化しないことを前提とした現在の沿岸地域の計画手法を再考する必要があるかもしれないという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-022-04426-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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