動物行動学:カワスズメ科の魚とエイの一種は足し算と引き算ができる
Scientific Reports
2022年4月1日
カワスズメ科のZebra mbunaとオレンジスポットタンスイエイは、1から5までの数字に、1を足したり引いたりできることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。今回の知見は、魚の計算能力が他の脊椎動物や無脊椎動物と同等であることを明らかにしている。
今回、Vera Schluesselたちは、8匹のZebra mbuna(Pseudotropheus zebra)と8匹のオレンジスポットタンスイエイ(Potamotrygon motoro)を使って、青色をプラス1の記号として、黄色をマイナス1の記号として認識するように訓練できるかどうかを調べた。今回の実験では、これらの魚類に青色または黄色の図形(1~5個)が描かれたカードを見せた上で、異なる数の図形が描かれたカードが置かれた2つのゲートを示した。そのうちの1つのゲートが正解だった。例えば、これらの魚類に3個の青色の図形が描かれたカードを見せた場合には、3プラス1で合計4となり、4個の図形が描かれたカードのあるゲートを泳いで通過することが正解だった。正解のゲートを通過すれば、報酬が与えられた。
この実験では、6匹のZebra mbunaと3匹のオレンジスポットタンスイエイが、青色と足し算、黄色と引き算を常に関連付けることを学習した。学習に要した平均セッション数は、Zebra mbunaが28回、オレンジスポットタンスイエイが68回だった。これらの課題における魚類の成績は一般的に良好だったが、足し算の学習の方が引き算の学習よりも容易で、成績のばらつきは、オレンジスポットタンスイエイよりZebra mbunaの方が大きかった。足し算課題で、Zebra mbunaは、合計381回の試験で296回(78%)正解を選び、オレンジスポットタンスイエイは、180回のうち169回(94%)が正解だった。引き算課題では、Zebra mbunaが381回のうち264回(69%)が正解で、オレンジスポットタンスイエイは180回のうち161回(89%)が正解だった。
Schluesselたちは、今回の実験に用いた魚類にとって計算能力がそれほど重要な意味を持たない可能性があると推測しているが、例えば魚の体表の縞模様や斑点を数えることで、個々の魚を外見で識別するのに役立つかもしれないと指摘している。Schluesselたちはまた、魚の認知能力と知覚力を見直す必要があることを示す証拠が増えてきており、今回の知見もその1つだと付言している。
doi:10.1038/s41598-022-07552-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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