天文学:木星型の太陽系外惑星の形成過程が観測された
Nature Astronomy
2022年4月5日
主星の恒星から遠く離れた位置(地球と太陽間の平均距離の93倍に相当)で形成される、ぎょしゃ座AB星B(AB Aurigae b)と呼ばれる木星型太陽系外惑星の画像について報告する論文が、Nature Astronomy に掲載される。この知見は、巨大惑星が、木星の形成を説明するために用いられる標準モデルであるコア集積モデルによってのみでなく、重力不安定性によって収縮するガスの大きな断片から形成される可能性もあるという考え方を支持する。
太陽系のガス惑星である木星や土星は、太陽から5~10天文単位(au;1 auは地球と太陽の間の平均距離に相当)を公転する。これらの惑星は、微惑星という小さな岩石質の成分のゆっくりとした集積と、地球質量の数倍の質量のコアへのガスの急速な降着によって形成された。しかし、ごく一部の巨大な太陽系外惑星(太陽系領域を超えたところに存在する惑星)は、恒星から50~200 auの距離にあることが撮像されており、このような距離では惑星を形成するための十分な微惑星が存在しそうにない。代わりに、これらの太陽系外惑星は、円盤や重力不安定性として知られる過程を通じて形成されたことが示唆されている。
今回、Thayne Currieたちは、すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を用いて、木星サイズの太陽系外惑星であるぎょしゃ座AB星Bが、ぎょしゃ座AB星と呼ばれる若い恒星の周辺のガス円盤内部に形成される様子を観測した。また、円盤物質の渦状の流れがぎょしゃ座AB星Bの後方に見られた。これは円盤不安定性によって予測される現象である。Currieたちは、ぎょしゃ座AB星Bの質量が木星の9倍であると推定した。また、Currieたちは、ぎょしゃ座AB星からの軌道半径が430 auおよび580 auと非常に離れた位置に存在する、初期段階にある2つの候補惑星も観測されたことから、複数の惑星がぎょしゃ座AB星を軌道運動している可能性があると示唆している。
Currieたちは、今回の知見は、惑星形成のこのような初期段階に重要な初見をもたらしたことにより、大質量のガス巨大惑星の進化をより深く理解する上で重要な意義を持つ可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41550-022-01634-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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