古生物学:トリケラトプスの化石標本「ビッグ・ジョン」から得られた戦闘損傷の証拠
Scientific Reports
2022年4月8日
トリケラトプスの化石標本(通称「ビッグ・ジョン」)に、別のトリケラトプスとの戦闘時に生じた可能性のある頭蓋骨の損傷が見られることを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。
トリケラトプス(Triceratops horridus)は、角竜類の恐竜で、頭蓋の頭頂骨と鱗状骨が伸びてできた大きなフリル(襟飾り)を特徴とする。この骨質のフリルについては、別のトリケラトプスとの戦闘中に体を保護し、損傷しないようにする機能を有していたと示唆されている。
今回、Ruggero D’Anastasioたちは、2014年に米国モンタナ州の上部白亜系ヘルクリーク累層で発見された巨大なトリケラトプスの化石標本(通称「ビッグ・ジョン」)を調べた。その結果、右鱗状骨に鍵穴の形をした開口部が見つかった。この開口部の周囲の骨の表面はでこぼこしており、プラーク状の骨の沈着物があった。これは、炎症(感染症による可能性がある)に起因するものかもしれない。D’Anastasioたちは、この開口部の大きな方の縁から採取した試料を解析し、開口部の周囲の骨組織は、開口部から離れた骨組織と比べて血管が多く、多孔質であることを明らかにした。これは、新たに形成された骨であることを示唆している。この骨には、ハウシップ窩という小さなくぼみがあり、骨のリモデリングがあったことを示す徴候と認められた。
これらの特徴を総合すると、この開口部は外傷によって形成され、骨が治癒する途中でビッグ・ジョンが死んだことが示唆される。D’Anastasioたちは、ビッグ・ジョンが死ぬ6か月以上前に別のトリケラトプスの角によって損傷を受けたという考えを示している。今回の知見に基づくと、恐竜の治癒過程の根本機構は、哺乳類の場合に類似していると思われる。
doi:10.1038/s41598-022-08033-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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