気候変動:2020年のハリケーンによる降水量に対する人為起源の気候変動の影響
Nature Communications
2022年4月13日
人為起源の気候変動のために、2020年の大西洋のハリケーン期における3時間降水量が、産業革命前と比べて最大10%増加したことを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。
2020年のハリケーン期は、ハリケーンの活動が観測記録上最も活発な年の1つで、命名されたハリケーンが30個に達した。大気中の温室効果ガスの量は人間の活動によって増加し続けており、これまでの研究で、2020年の全球平均表面温度が、工業化以前の水準との比較で1℃以上上昇したことが示された。この全球表面温度の上昇がハリケーンの強度と発生に影響を与えている可能性があることが示唆されているが、さまざまな競合関係にある気候の影響がハリケーンのパラメーターにどのように及んでいるかを解明するのは、依然として困難である。
今回、Kevin Reedたちは、人為起源の気候変動が海面水温に及ぼす影響をモデル化し、2020年に大西洋全域の海面水温が0.4~0.9℃上昇したという見解を示している。そして、Reedたちは、将来予測のためのモデルを使って過去の事例を予測する再予報(ハインドキャスト)という手法を用いて、2020年の北大西洋のハリケーン期全体における極値降水量に対する人為起源の海面水温上昇の寄与度を明らかにした。その結果、産業革命以前(1850年以前)と比較して、熱帯低気圧級の暴風による3時間降水量の極値と3日間累積降水量の極値が、それぞれ10%と5%増加したことが分かった。また、ハリケーン級の暴風の場合には、人為起源の影響はそれぞれ11%と8%だった。
Reedたちは、今回の知見から、ハリケーンによる降水量に人為起源のシグナルが見られることが実証され、このことが沿岸部の地域社会に直接的な影響を及ぼすという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-022-29379-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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