気候科学:気候変動対策の誓約を実行することが温暖化を抑制するために不可欠である
Nature
2022年4月14日
COP26会議でなされた気候変動対策の誓約について、その全てが誓約通りに履行された場合に限って、気温上昇を辛うじて2℃未満に抑えられる可能性のあることが、モデル化研究によって示唆された。この知見を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
2021年に開催されたCOP26会議までの5年間に、2015年のパリ協定の締約国のうちの153か国が2030年の気候変動緩和目標を新たに提出あるいは更新し、75か国が温室効果ガス排出削減の長期目標を策定した。しかし、COP26会議以前になされた最新の誓約の分析では、気温上昇が2℃を超える確率がやはり50%を上回ることが示唆された。今回、Malte Meinshausenたちは、COP26会議(インドも新たな気候変動緩和目標と長期目標を発表した)の開催中までになされた誓約を調べて、気温上昇が辛うじて2℃未満に抑えられる可能性がまだ残っていると主張している。
Meinshausenたちは、パリ協定の時から2021年11月にCOP26会議が閉会するまでの196か国の温室効果ガスインベントリーデータと気候変動緩和目標を分析し、全ての誓約が期限通りに完全に実行されれば、気温上昇の極大値が1.9~2.0℃に抑えられるかもしれないと推定している。一方、Meinshausenたちは、パリ協定のもっと野心的な目標(地球温暖化を1.5℃以下に抑える)の達成可能性について、更新後の誓約だけでは、残念なことに達成可能性はわずか6~10%であり、今後10年間に気候変動緩和策を大幅に強化しなければ達成は不可能だと付言している。
同時掲載のNews & Viewsでは、Zeke HausfatherとFrances Mooreが、「長期目標については、今後の10年間で各国を目標達成への道筋に乗せるための数々の短期的な目標に支えられたものでない限り、懐疑的な態度をとるべき」だと示唆し、各国がそれぞれの目標を達成するという保証はなく、「将来的な排出量削減の約束が、短期的政策の強化によって裏付けられるまでは、楽観的な見方を控えるべき」だと付言している。
doi:10.1038/s41586-022-04553-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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