古生物学:微細藻類の助けを借りて保存されたクモの化石
Communications Earth & Environment
2022年4月22日
フランス南部で発見された2250万年前のクモの化石の保存状態が極めて良好だった原因は、微細藻類の一種である珪藻の分泌物だという可能性を指摘した論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。化石記録において、小型で繊細な動物(クモ、昆虫、両生類など)が詳細に保存されていることはまれで、今回初めて記述された珪藻を利用した過程は、こうした生物の進化に関する我々の知識の多くに関係していた可能性がある。
地球上の生物の歴史に関する我々の知識のかなりの部分は、保存状態の良好な化石生物から得られた。石灰化した体の部分(貝殻、骨、歯など)の保存経路は、比較的単純なため、これらの化石は数多く残っている。これに対して、小型で繊細な生物種や軟組織は化石化しにくいため、これらの化石が発見されることはまれで、その保存経路はあまりよく分かっていない。
今回、Alison Olcottたちは、フランスのエクサンプロバンスの漸新世の古代湖底の堆積物から出土したクモの化石を高分解能顕微鏡技術で調べ、これらの化石が珪藻類の微小化石に覆われていることを発見した。珪藻類は、微細な水生藻類の一種で、生存中に硫黄分の豊富な物質を分泌して藻源マットを形成することが知られている。Olcottたちは、この物質がクモを覆って、硫化過程を促進し、クモの壊れやすい胴体を安定化し、その保存に寄与したという考えを示している。
Olcottたちは、この過程が広い範囲で起こっており、珪藻類が大陸湖で生息し始めた6600万年前以降の湖沼堆積物から出土した保存状態の極めて良好な化石のより多くのケースで、この過程が関係していたかもしれないと考えている。
doi:10.1038/s43247-022-00424-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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