微生物学:バクテリオファージ療法は免疫不全患者の多剤耐性感染症の治療に役立つ
Nature Communications
2022年5月4日
多剤耐性Mycobacterium chelonae 感染症を起こした免疫不全患者の治療に関して、手術と抗生物質の投与にバクテリオファージ療法を併用することが有効なことが明らかになった。バクテリオファージ療法によるM. chelonae 感染症治療の初めての成功例を報告した論文が、Nature Communications に掲載される。この論文には、この症例で観察された臨床反応が記述されている。
M. chelonae は、一般的に皮膚や軟部組織の感染症に関係しており、その患者の大半は、免疫系が弱った人々だ。しかし、M. chelonae の抗菌薬耐性が広範囲に及んでいるため、感染症治療が難しくなっている。バクテリオファージは、細菌に感染し、殺傷することができるが、現在のところ、ヒト免疫系との複雑な相互作用のために臨床使用が限定的になっている。バクテリオファージ療法は、 Mycobacterium abscessus 感染症(抗菌薬に対する広範な耐性が広く知られている)の治療に成功しているが、M. chelonae 感染症の治療には成功していない。
今回、Jessica Littleたちは、血清反応陰性関節炎を発症し、M. chelonae 感染症と臨床診断された免疫不全患者を治療するために、抗生物質の投与と手術と1回のバクテリオファージ療法を併用したことを報告している。治療後数カ月で、患者には、皮膚病変部の炎症と小結節の減少という優れた臨床反応が見られ、バクテリオファージ療法の有害な副作用は見られなかった。
今回の知見は、バクテリオファージが多剤耐性感染症の有望な治療選択肢になるかもしれないことを示唆している。ヒト免疫応答とファージ療法の安全性(特に免疫不全患者における感染症の臨床的負担を考慮した場合)に関する理解とマイコバクテリアの薬剤耐性についての理解を深めるためには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41467-022-29689-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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