地球科学:バイオクラストは風に吹かれる塵を減少させる
Nature Geoscience
2022年5月17日
バイオクラスト(主に乾燥地の土壌表面に生息する細菌、地衣植物、非維管束植物の群落)は、全球の塵の放出を55%削減し、毎年およそ7億トンの塵の排出を抑制する可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。この知見は、全球の環境変動を管理する上でのバイオクラストの重要性を明確に示している。
バイオクラストは、世界の乾燥地の「生きている皮膚」に相当するもので、世界中の陸地表面の12%を覆い、土壌の安定性を増すことで土壌の浸食を減少させている。この安定化効果は、風を制御した小規模な実験で、塵を減少せることが分かっている。しかし、バイオクラストが全球で大気中の塵(地球の気候に大きな影響を及ぼすエーロゾル)の循環にどの程度影響を及ぼしているかは、現在までのところよく分かっていない。
今回、Emilio Rodriguez-Caballeroたちは、この安定化効果を検討するために、現在と将来の条件において、バイオクラストが全球の塵の循環とそれに対応する気候に及ぼす影響を見積もった。Rodriguez-Caballeroたちは、バイオクラストが全球の塵の放出と堆積を大きく減少させ、全体として塵の負荷を55%減少させることを明らかにした。その結果、バイオクラストは塵の気候への効果に対して、人為活動によるエーロゾルの直接的効果と相当の影響を及ぼす可能性がある。しかし、Rodriguez-Caballeroたちは、気候変動と土地利用の強化により引き起こされるバイオクラストの損失が予想通り厳しいものであるなら、全球の塵の負荷が、2070年には最大15%増加すると予測している。
Rodriguez-Caballeroたちは、バイオクラストが全球の塵の循環と関連する気候効果に及ぼす影響は、人類の健康、生物地球化学的循環、および生態系の機能に重要な意味を持つと結論付け、従って、これらの知見は、バイオクラストを全球的変動の重要な要素として検討する必要があることを示唆していると述べている。
doi:10.1038/s41561-022-00942-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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