気候変動:オーストラリアで高木の枯死が増えている
Nature
2022年5月19日
オーストラリアのクイーンズランド州北部で、1984~2019年の間に高木の枯死数が倍増した可能性があることを示唆した論文が、Nature に掲載される。この知見は、この地域の高木の寿命が半減している可能性があり、これは、気候変動の激化とサイクロンによる風のかく乱事象に関連した影響であることを明らかにしている。
熱帯林は、全球的な炭素循環にとって重要で、気候変動のペースに影響を与えることが知られている。これまでの研究で、熱帯の一部の地域で高木の枯死が加速しており、大気中の二酸化炭素を吸収する熱帯の炭素シンクの将来に影響を及ぼすことが示唆されている。しかし、高木の枯死を引き起こしていると考えられる機構や、特に脆弱な樹木種があるかは明らかになっていない。
今回、David Baumanたちは、クイーンズランド州北部の81種の高木(合計7万4135本)と24か所の森林調査区を対象として、1971~2019年の高木の枯死パターンを解析した。その結果、1984~2019年に、年間の高木枯死リスクが、全ての調査区と樹木種で平均して倍増したことが判明した。生育地の気候が乾燥している高木の方が、平均枯死リスクが高かった。Baumanたちは、従って、地球温暖化によって引き起こされる大気中の水分ストレスが、湿潤な熱帯林における高木の枯死を増加させる主な原因となっている可能性があるという考えを示している。
Baumanたちは、高木の健康状態の評価方法が改善されれば、個々の高木の枯死の原因を特定する能力が高まるかもしれないと主張している。
doi:10.1038/s41586-022-04737-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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