量子物理学:直接つながっていないノードとノードの間での量子情報のテレポーテーション
Nature
2022年5月26日
ノード量子ネットワーク上の2つの隣接していないノード間での量子情報のテレポーテーションが実証されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の成果は、量子インターネットの構築に向けた重要な一歩だ。
量子テレポーテーションは、量子情報をある場所から別の場所に転送することで、安全な通信や量子コンピューティング、次世代インターネットの開発に応用できる可能性がある。これまでに報告された量子テレポーテーションの実験的実証は、つながった2つのノードの間でのテレポーテーションだった。これに対して、つながっていないノードの間でのテレポーテーションは、量子インターネットなどの量子ネットワークの開発に非常に重要になる。
今回の研究で、Sophie Hermans、Ronald Hansonたちが用いた量子ネットワークは、Alice、Bob、Charlieという3つのノードを光ファイバーで1列に接続したもので、AliceとBob、BobとCharlieの間は直接つながっているが、AliceとCharlieの間は直接つながっていない。テレポーテーションは、まず、エンタングルした量子状態が隣接したノード間で共有されていることを必要とする。そこで、中央のノード(Bob)で量子エンタングルメントスワッピング操作を行って、AliceとCharlieの間にエンタングルメントを生成することで、両者間での量子情報の直接テレポーテーションが実現した。デリケートな量子情報を保持しつつ、このテレポーテーションのプロトコルの各段階を実施するには、量子状態の準備、操作、読み出しの改善が必要だった。
今回の研究では、つながっていないノード間での情報共有が実証された。Hermansたちは、この成果は、量子情報のテレポーテーションを介して通信する量子ネットワークの構築に向けた一歩になる可能性があるという見解を示している。一方、同時掲載のNews & Viewsにおいて、Oliver SlatteryとYong-Su Kimは、量子ネットワーク全体でユビキタスなテレポーテーションが実現するのは、まだかなり先のことになるとしている。Hermansたちは、複数回のテレポーテーションを実現し、大規模な量子ネットワークを構築するには、システムの複数の機能をさらに改善する必要があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-04697-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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