ロボット工学:ヒューマノイドロボットを用いたヒト組織移植片の培養
Communications Engineering
2022年5月27日
筋肉と骨をつなぐヒト腱組織を成長させるための人型ロボットシステムについて報告する論文が、Communications Engineering に掲載される。この成果は、将来患者に使用される組織移植片の生産と品質を改善し、高度なロボットシステムの開発を支援できるかもしれない。
ヒト腱移植片の成長を促進し、機能を向上させるためには、外部から力を加える必要がある。ここ20年以上の間、ロボット工学では、伸展装置を用いて、組織工学的に作られた組織をバイオリアクター内で培養する研究を進めてきたが、臨床で使用できるような十分に機能する組織移植片は作製できていない。現在の伸展刺激バイオリアクターは、細胞の実際の成長状態や機械的応力をうまく模倣できないため、ヒトの動きや力をもっと現実的に模倣するヒューマノイドロボットが、組織移植片の品質を改善する方法として研究されている。
今回、Pierre-Alexis Mouthuyたちは、軟質で柔軟性のあるバイオリアクターチャンバーとヒューマノイドロボットの肩関節を組み合わせた装置を設計し、これによって培養細胞に直接力を加えて、複雑な動きをさせることが可能なことを実証した。このロボットは、ヒトの肩の動きを模倣し、バイオリアクターチャンバー内で培養している腱細胞に実際の状態に近い伸展力を加えることができた。Mouthuyたちは、この装置による培養開始から14日後に、ロボットの動きによって加えられた力の強度が、静置培養と比較して、ヒト細胞の成長と遺伝子発現に影響を及ぼしたことを明らかにした。
今回の手法は、組織工学のためのロボットシステムの開発と、将来的にヒト患者に用いるための改良型の培養モデルの開発に新たな機会をもたらす可能性がある。Mouthuyたちは、今後の研究では、さまざまな力の負荷方法、骨格材料、および細胞タイプの影響をさらに詳細に調べる必要があると主張している。
doi:10.1038/s44172-022-00004-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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