社会学:特定の国の科学研究へ偏る引用バイアス
Nature Human Behaviour
2022年5月31日
研究活動の活発な一部の国々の研究者から報告される科学論文は、より多く引用される傾向にあることを明らかにした論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。この知見は、引用バイアスが科学界に存在することを示唆しており、これは、世界の多様な意見が聞き入れられにくく、認められにくいことを意味している可能性がある。
科学論文は、引用を用いて、当該研究が参考にした過去の研究成果に言及し、参考文献のリストの形にまとめている。多くの参考文献リストに含まれる論文は、引用度が高いと言われる。
今回、Charles Gomezたちは、1980~2012年に発表された150の分野の約2000万件の科学論文の本文と引用を調べ、論文の本文に基づいて予想される引用数と、その論文の実際の引用数との差を捉える尺度を開発した。その結果、少数の国(米国、英国、中国など)が科学研究の中核を担っており、中でも米国があらゆる分野で突出していることが判明した。言い換えると、この中核グループの研究者による論文は、たとえ類似の内容を扱っていても、他の国々(ブラジル、メキシコ、トルコなど)の研究者による論文に比べて引用されやすかった。また、Gomezたちは、引用されやすい国とされにくい国の間に見られるギャップは、時を経るごとに大きくなっていることを見いだした。
Gomezたちは、一部の国の研究論文は、科学研究において組織的に見落とされていると結論付け、その結果、そうした国々からの知見は世界の科学に組み入れられず、世界の科学の発展を妨げかねないと論じている。
doi:10.1038/s41562-022-01351-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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