古生物学:メガロドンが絶滅した原因の1つはホオジロザメとの競合かもしれない
Nature Communications
2022年6月1日
これまでに存在した最大級の肉食動物であるメガロドン(Otodus megalodon、和名ムカシオオホホジロザメ)が絶滅した原因の1つは、ホホジロザメとの食物資源の奪い合いであった可能性を示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、サメの現生種と絶滅種の食餌に関する知識を深める手掛かりになる。
動物の栄養レベルは、生態系内での位置を示しており、食餌は、動物の生活様式や生態を理解する上で重要な役割を果たす。動物の歯が形成されるとき、亜鉛が歯のエナメル質に取り込まれる。この亜鉛の値は、動物の食餌を解明し、その動物の生態系における栄養レベルを推測するための代用指標として使用できる。メガロドンは、巨大な歯を持つサメで、その絶滅の原因が議論されている。
今回、Jeremy McCormackたちは、亜鉛同位体を用いて化石生物の食餌を推測する方法を紹介している。今回の研究では、サメの現生種20種(野生のサメと水族館で飼育されているサメを含む)と化石種13種(メガドロンを含む)の歯に含まれる亜鉛同位体の値を集めたデータベースが構築された。その結果、歯に含まれる亜鉛同位体の値は、地質年代を超えて安定しており、それぞれのサメ種の栄養レベルも示していることが分かった。McCormackたちは、メガロドンとホオジロザメの亜鉛同位体の値を比較し、この2種のサメが、前期鮮新世に同じ地域で生息し、栄養段階が重複し、同じ食物資源(クジラ目の動物を含む海洋哺乳類)を巡って競合していた可能性のあることを明らかにした。McCormackたちは、メガロドンの絶滅には気候の変化や環境の変化など複数の原因が考えられると強調する一方で、ホオジロザメとの競合が一因となった可能性も示している。
McCormackたちは、亜鉛同位体がサメ以外の海洋脊椎動物の化石種の食餌、生態、進化を調べるためのツールとしても有望だと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-30528-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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