天体物理学:新たな反復高速電波バースト
Nature
2022年6月9日
新たな反復高速電波バーストが検出され、この電磁放射線の発生源が存在する矮小銀河が同定されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この電磁放射源のいくつかの特徴は、初めて観測された反復高速電波バーストの場合と類似しているが、その他の反復高速電波バーストの源の特徴として提案されている内容とは大きく異なっている。今回の発見は、高速電波バーストを使って宇宙を研究する方法にとって重要な意味を持っている可能性がある。
高速電波バーストは、無線周波数の電磁波パルスで、2007年に初めて発見され、今では銀河間物質(銀河間の空間)の内容を調べるために用いられている。しかし、数々の高速電波バーストの観測結果に差異があるということになれば、銀河間物質を研究するためのツールとしての利用法に影響する可能性が生じる。また、分散量度を用いて推定される距離が正確でないかもしれないということにもなる。例えば、母銀河が高速電波バーストの分散(分散量度)に影響を与える程度は一般的には小さいと考えられているが、そうではないと思われる例が少なくとも1つ存在している。
今回のD Liたちの論文で報告されている観測結果により、この例外的な事例がもう1つ増えた。Liたちは、この論文で、新たに検出された反復高速電波バースト(FRB 20190520B)について記述し、その母銀河(J160204.31-111718.5)を同定したことを報告している。この銀河の赤方偏移はz = 0.241で、これは光度距離1218メガパーセクに相当する。FRB 20190520Bは、母銀河が矮小銀河で、コンパクトで持続的な電波源が関連している点で、初めて観測された反復高速電波バースト源(FRB 121102)に似ている。しかし、FRB 20190520Bの母銀河の推定分散量度は、高速電波バーストの母銀河の平均分散量度よりほぼ一桁高い。Liたちは、母銀河の諸特性の解明をさらに進めることが、現在の高速電波バーストの分類を改善することにつながる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-022-04755-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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