保全:絶滅寸前種の有袋類を絶滅に追いやる野良猫
Scientific Reports
2022年6月17日
マウスほどの大きさの小型有袋類のエートケン・スミントプシス(Sminthopsis aitkeni)は、絶滅寸前種とされ、南オーストラリア沖のカンガルー島でしか見られない。今回、エートケン・スミントプシスが野良猫による捕食によって絶滅の危機に瀕していることを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。この論文では、特に林野火災などの自然災害の後に、脆弱な生物種を野良猫の捕食から保護することが緊急に必要なことが強調されている。
カンガルー島には、およそ500匹のエートケン・スミントプシスしか残っていないと推定されている。この島は、2019~2020年の林野火災で大きな被害を受け、エートケン・スミントプシスの生息地の98%が激しく焼失した。野良猫による捕食は、オーストラリアの多くの在来種に対する重大なリスクとなっているが、野良猫がエートケン・スミントプシスにとっての脅威であるかどうかは、まだ確認されていない。
今回、Louis Lignereuxは、カンガルー島の特別に指定された保護区で2020年2〜8月に捕獲された86匹の野良猫の胃内容物と消化管を調べ、野良猫による捕食の影響を調べた。全ての野良猫は、オーストラリアの野良猫駆除プログラムの一環として捕獲され、南オーストラリア州の動物福祉法に従って安楽死させられた。Lignereuxたちは、野良猫7個体(サンプル総数の8.1%)の消化器系から8匹のエートケン・スミントプシスの遺骸を発見した。
この知見は、野良猫がエートケン・スミントプシスを捕食することを初めて確認したものであり、森林火災後の個体数が少なかったことを考えると、野良猫がエートケン・スミントプシスの効率的な狩猟をしていたことを示唆している。Lignereuxたちは、小規模で孤立した個体群、林野火災のような自然災害、野良猫のような天敵による捕食などの圧力が組み合わさると、脆弱なエートケン・スミントプシスが絶滅してしまうかもしれないと述べた上で、絶滅危惧種の生息地で野良猫の駆除活動を維持する必要性を強調している。
doi:10.1038/s41598-022-11383-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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