材料:アボカドの鮮度を長持ちさせる低コストで持続可能な食品包装
Nature Food
2022年6月21日
このほど実施された予備的研究で、有害物質の入っていない生分解性抗菌性食品包装システムが発表され、これによって食品の寿命が延び、食品の安全性が向上することを報告した論文が、Nature Food に掲載される。このシステムの概念実証には、アボカドが用いられ、このシステムをスケールアップして、低コストで環境に優しい抗菌食品包装を生産できる可能性のあることが明らかになった。
既存の食品用抗菌フィルムは、多量の有効成分を必要とすることが多い。これに対する低コストの代替品が、繊維ベースのコーティングだ。その理由は、繊維材料の表面積対体積率が高く、繊維材料に含まれる抗菌剤の利用効率を高められる可能性があることだ。しかし、現在のところ、生産性が低いという問題と害をもたらす可能性のある物質と化学過程への依存という問題があるため、マイクロファイバーを使った食品包装は、限定的な利用にとどまっている。
今回、Kevin ParkerとPhilip Demokritouたちは、抗菌繊維を1段階で合成し、生鮮食品に直接コーティングすることだけで、それ以上の処理を必要としない高生産性繊維紡糸システムを発表した。この抗菌繊維は、米国食品医薬品局が「一般に安全と認められる」食品添加物に指定した天然多糖類のプルランと天然由来の抗菌剤(タイム油、クエン酸など)から構成されている。Parkerたちは、このシステムがスケーラブルであることを実証した。このシステムによる繊維生産速度(0.2 g/分)は、広く用いられている電界紡糸法による繊維生産技術(0.01 g/分)よりも高い。抗菌性を有するプルラン繊維は、液体環境と土壌環境の両方で生分解性を有することも判明した。この繊維を使ってアボカドをコーティングしたところ、対照と比較して、腐敗、重量減と変色が少なくなった。
Parkerたちは、このように水を用いた繊維合成過程が、可食性・水溶性という特徴を有するプルランと生産性の高い繊維技術と組み合わさることが、生鮮食品を低コストで包装する有望な戦略になるという考えを示している。
doi:10.1038/s43016-022-00523-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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