社会科学:国連の持続可能な開発目標は政策の変更を生み出していない
Nature Sustainability
2022年6月21日
国連の持続可能な開発目標(SDG)は、持続可能性に関わる各国政府の言説に影響を及ぼしているが、法的措置や資源配分の決定にはつながっていないことが、Nature Sustainability に掲載された論文で報告されている。こうした知見は、SDGの政治的影響は限定的で、政策立案者による変革を可能にするにはもっと大胆な措置を講じる必要があることを示唆している。
2015年に採択された幅広い17のSDGとそれに付随する169の具体的なターゲットは、多くの研究によって調べられている。しかし、貧困撲滅、環境保全、社会的公正などの課題に取り組む政策決定において、全世界、国家、地域のレベルでSDGが目に見える変化をもたらしたかどうかについて分かっていることは少ない。
今回F Biermannたちは、SDGの社会的影響を調べた3000を超える2016〜2021年の研究を分析した。著者たちは、政治システムを改革する影響を明確にするために、SDGに対応した3種類の政策変更の証拠を探した。それは、政治的討論の変化、法律、規制、政策の修正、新しい部局、委員会、計画の創設やその代わりになる既存の機関の再編である。各国の持続可能性に関する議論は2015年以降変化し、持続可能な開発政策に関する政府間の相互学習がいくつかSDGによって促進されている。しかし、全般的には、SDGの結果としてのより厳しい政策、組織の再編、資金の再配分、新しい法律の制定や計画の策定に関する証拠は孤立したものしかないと、著者たちは指摘している。
著者たちは、SDGには法的拘束力がないため、政策立案者たちは、個別解釈か選択的解釈を通して、SDGを自身の目的のために使っているように思われると結論付けている。さらに続けて著者たちは、この枠組みでは、全世界の持続可能性政策や、その野心的目標を達成するのに必要な基本的な変化を生み出し得ないことが立証されつつあると述べている。
doi:10.1038/s41893-022-00909-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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