気候科学:アゾレス高気圧の拡大により乾燥するイベリア半島
Nature Geoscience
2022年7月5日
アゾレス高気圧(大西洋に現れる高気圧)の拡大が、過去数千年の間でイベリア半島に最も乾燥した条件をもたらしていることを示したモデル化研究が、Nature Geoscience に掲載される。
ヨーロッパ西部の気象と長期気候パターンは、アゾレス高気圧として知られている恒常的な時計回りの高圧帯に関連した大気循環に強い影響を受ける。この高気圧帯内部で地表に向かって下降する乾燥した空気は、ポルトガルとスペインの大部分のみならず、より広範な地中海西部の暑く乾燥した夏の主要な原因となっている。特に湿潤な冬の数か月間には、アゾレス高気圧の位置が移動することがその南縁に沿った西風の原因となっており、湿気をイベリア半島に移動させている。しかしながら、この冬季の降水量はここ数十年間で減少している。
Caroline Ummenhoferたちは今回、アゾレス高気圧のサイズと空間的広がりが過去1200年間にわたり、どのように変化したかをモデル化した。著者たちは、アゾレス高気圧が、約200年前の人類起源の温室効果ガス放出が大きく増加し始めた時に、平均としてより大きな領域に広がり始め、この空間的な拡大は20世紀により顕著になったことを明らかにしている。彼らのモデルを、西暦紀元850年までさかのぼるポルトガルの石筍内に保存された過去の降水量に対する地球化学的指標と比較することで、アゾレス高気圧の拡大が地中海西部の乾燥した冬の始まりと関連があることが示唆された。
著者たちは、温室効果ガスのレベルが上昇し続けているので、アゾレス高気圧の拡大は21世紀に入っても継続し、イベリア半島における干ばつの危険性の増大をもたらしていると結論している。
doi:10.1038/s41561-022-00971-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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