気候変動:沿岸部の地域社会における漁業と農業に対する気候変動の影響評価
Nature Communications
2022年7月6日
インド太平洋地域の5か国を対象にした研究で、沿岸部の地域社会において漁業と農業の両方によって得られる食料が気候変動によって減るかもしれないことが示唆された。この研究結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
気候変動は、食料生産部門に影響を及ぼすと予想され、熱帯では、農業と漁業の両方が影響を受ける可能性が高い。そのため、農業と漁業の両方に大きく依存している沿岸部の農村地域社会は、二重の負担を強いられるかもしれない。これまでに農業と漁業が地球規模で気候変動にどのように応答するのかをモデル化した研究が行われているが、こうした大規模な予測は、社会経済的影響が生じる地域スケールとは、ほとんど関連性がない可能性がある。
今回、Joshua Cinnerたちの研究グループは、インドネシア、マダガスカル、パプアニューギニア、フィリピン、タンザニアの沿岸部の地域社会(72か所)を対象として、気候変動が農業と漁業に及ぼす影響可能性を調べた。Cinnerたちは、3000以上の世帯を対象とした社会経済調査の結果と高排出シナリオ(SSP5~8.5)と低排出シナリオ(SSP1~2.6)の下での作物収量と漁獲量の減少をモデルによって予測した結果を統合した。その結果、国内レベルでも全球レベルでも脆弱性の程度に地域差が見られ、社会経済的状況が低い地域社会が特に深刻な影響を受けることが報告された。Cinnerたちは、気候変動によって想定される生産量の減少幅が、農業部門よりも漁業部門で大きくなるが、高排出シナリオの下では、調査対象の地域社会の多くで農業と漁業の両方で生産量の大幅な減少が生じることを指摘している。Cinnerたちは一方で、低排出シナリオの下では、農業と漁業の両方で生産量が減少する地域社会が減ると予測され、このことは、気候変動を緩和することの利点を強調していると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-30991-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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