がん:消化器系のがんで有望な活性を示したCAR T療法
Nature Medicine
2022年5月10日
消化管腫瘍の細胞で高度に発現されるタンパク質(CLDN18.2)を特異的に標的とするCAR T細胞を使う免疫療法は安全であり、消化管がん患者では48.6%が治療に反応を示し、胃がんの患者ではその割合が57.1%にもなることが報告された。これらの知見は、現在進行中の第1相臨床試験の当初の解析で判明したもので、CLDN18.2特異的CAR T細胞療法は消化器系のがんの患者の実際に使える治療選択肢の1つになるかもしれない。
消化管のがん(胃がん、膵臓がんを含む)は一般に予後が不良で、治療法の選択肢も限られている。CAR T細胞療法は、患者自身のT細胞を改変してがん細胞を認識して殺せるようにする免疫療法の一種で、白血病やリンパ腫などの血液がんの治療法として認可されている。しかし、消化管のがんなどの固形がんの治療に対するCAR T療法の効果は、このようなタイプのがんを標的にすることが難しいために、まだはっきり分かっていない。
L Shenたちは、CLDN18.2を標的とするCAR T療法の現在進行中の第1相臨床試験について、初回解析結果を明らかにした。この試験は、CLDN18.2を発現する消化管がんでこれまでに治療を受けた経験のある患者(全部で37人、うち28人は胃がんまたは食道胃接合部腺がん、5人は膵臓がん)を対象にしている。CAR T細胞の初回注入後には、全般的に許容可能なレベルの安全性プロファイルが見られた。投与した患者全体で見ると、奏効率は48.6%、病勢制御率は73.0%であり、胃がん患者に限って見ると、奏効率は57.1%、病勢制御率は75.0%であった。
これらの結果は、CAR T細胞を固形がんの治療に用いることに関する新たな知見であるが、今回の臨床試験の最終結果に加えて、さらに大規模な臨床試験での検証が必要であろう。
doi:10.1038/s41591-022-01800-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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