天文学:制御不能なロケットの再突入による死傷者リスクの評価
Nature Astronomy
2022年7月12日
ロケット機体の大気圏への制御不能な再突入によって人命に及ぼされるリスクを、30年分のデータの分析により評価した研究がNature Astronomy に掲載される。今回の研究により、現在のやり方では、典型的なロケットの再突入が10平方メートルの面積に破片を撒き散らすと、今後10年間に1人以上の死傷者が生じる確率が約10%であることが明らかになり、さらにこうしたリスクはグローバル・サウスの人々に偏在していることが実証された。
ロケットの打ち上げは多様であるが、ブースターなどの大きな部品は地球に落下したり、軌道上に放置されたりする。多くの場合、放置されたロケット機体は制御不能のまま大気圏に再突入し、破片は飛行経路のどこにでも落下する可能性がある。
Michael Byersたちは今回、過去30年間の人工衛星データを用いて、制御不能なロケットの再突入の結果として今後10年間の「死傷者予測」、つまり人命に対するリスク予測を見積もった。研究チームは、部分的に損傷しないまま残され、地上、海上、飛行機に危険性を持つロケットの破片に着目した。著者たちは、1回の再突入が10平方メートルに重大な被害をもたらす破片を撒き散らすとすれば、現在のやり方では、今後10年間において、平均10%の確率で1人以上の死傷者を生じることを明らかにしている。さらに、このリスクはグローバル・サウスに偏っていて、ジャカルタ、ダッカ、ラゴスの緯度には、ニューヨーク、北京、モスクワの緯度よりもおよそ3倍の確率でロケット機体が落下する。
著者たちはさらに、我々はすでに誘導再突入システムの技術を有していることを説明している。しかしながら著者たちによると、これにはコストがかかるため、我々はこれらの技術を採用しようとする全体的な意思が欠けているのだという。著者たちは、ロケット再突入の制御を義務付ける多国間協定がなければ、宇宙探査をする国々はこうしたリスクを不必要に輸出し続けることになると結論付けている。
doi:10.1038/s41550-022-01718-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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