社会科学:現金給付はHIV感染の転帰の改善に関連する
Nature Human Behaviour
2022年7月19日
貧しい境遇にある人々への現金給付プログラムは、1996~2019年の42か国におけるHIV感染の転帰の改善と関連していたことを明らかにした報告が、Nature Human Behaviour に掲載される。
HIVは、依然として世界の、特に貧困状況にある人々にとって公衆衛生上の重大な脅威の1つであり、2019年には推定170万件の新規感染と69万件のAIDS関連死を引き起こした。過去20年間に、多くの低・中所得国において、貧困と戦うための現金給付プログラムが導入されてきた。従来の研究では特に、現金給付プログラムが、貧困の削減、子どもの就学率の向上、女性の社会的地位の向上、医療サービス利用の改善の一助となっていることが報告されている。現金給付プログラムはまた、HIVのリスク行動を抑制し、HIVサービスの利用を高める可能性があるが、HIV関連転帰に対するその全体的な効果は依然として不明であった。
今回、Aaron RichtermanとHarsha Thirumurthyは、現金給付プログラムがHIVに及ぼす影響を理解するために、HIVが流行している42か国(アフリカ36か国、ラテンアメリカ・カリブ諸国4か国、アジア2か国)で得られた1996~2019年のデータ(回答者総数188万5733人、うち女性は69%)の解析を行った。研究チームは、因果関係の検出に使用される「差分の差分法」を使用した。その結果、現金給付プログラムは、新規HIV感染およびAIDS関連死の減少、HIV検査の増加、抗ウイルス療法の適用率の改善と関連していることが分かった。
研究チームは、今回の研究にはいくつかの限界があることを指摘しているが、貧困との戦いが低・中所得国におけるHIV流行を抑える方法の1つとなる可能性があると結論している。
doi:10.1038/s41562-022-01414-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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