古生物学:哺乳類が温血動物になった時期
Nature
2022年7月21日
温血性哺乳類が出現したのは、約2億3300万年前の後期三畳紀だった可能性を示唆する論文が、今週、Nature に掲載される。この知見は、哺乳類の祖先種の内耳の化石に基づいており、哺乳類の進化史の理解を深める。
温血性(内温性)は、哺乳類と鳥類の重要な特徴であり、深部体温をほぼ一定に維持することによって多様な環境条件下での生息を可能にしている。内温動物は、行動が活発で、素早く、遠くまで移動できるのに対して、外温動物(冷血動物)は、動きが遅く、あまり活発でなく、有酸素能力が低い。哺乳類の進化史において内温性が最初に出現した時期を解明する研究は、ほとんどの化石証拠から明確な結論を導き出すことができずに難航している。
今回、Ricardo Araújo、Romain David、Kenneth Angielczykたちは、哺乳類の祖先種の内耳の半規管の構造を調べることが、この内温性への移行がいつ起こったかを突き止める際に役立つかもしれないと考えている。この半規管の内部は内リンパ液で満たされており、その粘度は体温に応じて変化する。
今回の研究では、哺乳類の祖先種である絶滅種群(56種)の半規管の構造変化を調べたところ、内温性に関連する変化(例えば、幅の狭い半規管)が発見された。Araújoたちは、哺乳類の祖先種において現在のような半規管の構造が突然出現したのが後期三畳紀で、気候の不安定な時期だったことを明らかにし、その頃に内温性が出現したという考えを示している。この研究知見は、5~9°Cの体温上昇と有酸素能力と無酸素能力の増大と相関していた。
doi:10.1038/s41586-022-04963-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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