代謝:母乳栄養で育てる期間を長くすることが齧歯類を成体期の肥満から守る
Nature Metabolism
2022年7月26日
齧歯類の新生仔を長く母乳で育てると、成体になった後、たとえ高脂肪食を与えた場合でも肥満になりにくいという報告がNature Metabolism に掲載される。この知見は、齧歯類での母乳栄養の重要性を示す証拠ではあるが、このような効果が、ヒトをはじめとする他の哺乳類にも見られるかを明らかにするには、今後の研究が必要である。
母親の食餌と新生児の栄養摂取は、成長初期の神経発達と行動応答の重要な決定因子で、一生にわたって代謝の健康に影響を及ぼす可能性がある。母親の栄養状態が出生時に与える影響は盛んに研究されているが、母乳栄養が生涯にわたってエネルギー収支に影響する仕組みは、ほとんど解明されていない。
今回、Rubén Nogueirasたちは、哺乳期間の延長が、成長後も食餌による肥満の誘発を防ぐことを明らかにした。離乳を遅らせると(生後4週からと3週からを対比)、ラットは成体になってから脂肪の多い食餌を与えた場合にも体重増加しにくかった。この現象は、FGF-21(fibroblast growth gactor 21)と呼ばれるタンパク質が肝臓から放出され、視床下部へと到達することで説明できると著者たちは述べている。視床下部は、全身のエネルギー消費やエネルギー利用の制御に重要な役割を果たす脳領域であり、それによって、脂肪組織の動員、利用が増加し、エネルギー消費も増加する。
これらの知見により、齧歯類で母乳栄養が長く続けて利益をもたらす仕組みについて新たな手掛かりが得られ、母乳栄養が成体期に肥満などの代謝疾患を防ぐ役割を果たすことが裏付けられた。関連するNews & ViewsではElisa Félix-SorianoとKristin Stanfordが、「この研究は発生生物学の新たな研究につながり、母乳栄養の長期的な代謝効果をさらに深く理解するための臨床研究に道を開くだろう」と述べている。
doi:10.1038/s42255-022-00602-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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