Research Press Release
物理学:全層雪崩と地震の起源はよく似ている
Nature Physics
2022年7月26日
全層雪崩は、陸塊が互いに対してほぼ水平に動く横ずれ地震で生じるのとよく似た破壊過程に起因して起こることを示した論文がNature Physics に掲載される。この知見は、雪崩の潜在的なサイズの評価に役立つ可能性があり、山岳地帯におけるハザードマップの作成や予測手順を改善できるかもしれない。
全層雪崩は、いくつかある雪崩の種類の1つで、孔の多い弱い雪の層が山の斜面にあり、より凝集した雪の層の下に埋もれている場合に起こる。孔の多い層に亀裂ができて広がると、雪塊全体が斜面を滑り落ちる。
今回Johan Gaumeたちは、全層雪崩につながる亀裂の発達をモデル化した。著者たちは、亀裂の伝搬速度は、時速360キロメートル以上と極めて速くなり得るため、大きな雪崩が発生した区域からスキーヤーやスノーボーダーが逃れるのはほぼ不可能であることを明らかにしている。この知見は、フランス・スイスのアルプス山脈でプロスノーボーダーのジャンプによって偶然生じた実際の大規模な雪崩の映像記録を分析して、実験的に検証された。
今回の結果は、比較的単純で時間効率の良い計算モデルを用いて、リスク管理手続きのために雪崩が生じるサイズを評価できることを示唆している。著者たちは、雪崩といわゆる横ずれ地震の類似性が明らかになったことを考えると、将来の大規模な雪崩発生実験から地震科学に役立つ知見が得られる可能性もあると期待している。
doi:10.1038/s41567-022-01662-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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