環境:湖のプラスチック汚染が湖水中の細菌増殖を助長している
Nature Communications
2022年7月27日
湖では、ポリ袋から溶出した化学物質が、細菌の増殖を促進しており、天然有機物よりも促進作用が大きいことを示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、スカンジナビアの29か所の湖で採取された試料に基づいており、場合によっては汚染削減戦略に役立つかもしれない。
淡水(川・湖・池)は、広範囲にわたってプラスチック廃棄物に汚染されている。プラスチックが分解されると、細菌の増殖のためのエネルギーを供給する化合物が放出されるが、その毒性のために細菌の増殖が阻害されることもある。これらの化合物が微生物の代謝と増殖速度にどのように影響するかは、よく分かっていない。
今回、Eleanor Sheridanたちは、超高分解能の質量分析法を用いて、スカンジナビアの29か所の湖で採取された試料に含まれていた低密度ポリエチレン(LDPE)製レジ袋(淡水で最も一般的に見られるプラスチック)から溶出した化合物と有機物を分析した。その結果、プラスチックから溶け出した化合物が化学的に鑑別され、細菌類がそれを炭素源として利用しており、天然有機物よりも利用しやすいことが判明した。このように炭素を利用しやすくなったことで、細菌の増殖効率は1.72倍高まった。Sheridanたちは、細菌の増殖速度が、細菌の多様性と湖水中の天然有機物の特性の両方に依存していたことを指摘している。
Sheridanたちは、今回の研究が細菌のみに着目したものであり、他の微生物(例えば、微細藻類や菌類)に対するプラスチックの影響を考慮していない点に注意を要するとしている。その一方で、Sheridanたちは、湖沼環境で自然に発生する細菌分類群の一部(例えば、デイノコッカスやハイメノバクター)が、プラスチック由来の化合物の除去に特に適している可能性があり、将来の汚染削減戦略に役立つかもしれないという見解も示している。
doi:10.1038/s41467-022-31691-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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