生態学:休閑地を利用したバニラ栽培で生物多様性を高める
Nature Communications
2022年7月27日
マダガスカルで休閑地をアグロフォレスト(混農林)として利用してバニラを栽培すれば、生物多様性が高まり、保護区の外での環境保全への道も開けることを示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。
マダガスカルは、過去60年間に農業のために老齢林の44%を失った。マダガスカルはバニラの主要生産国の1つだが、バニラがマダガスカルの在来種でないため、人工授粉しなければならない。また、バニラは、樹木に茎を絡めて成長するため、農家は、バニラ栽培のために樹木を植えたり、既存の樹木を利用したりしなければならない。
今回、Annemarie Wurzたちは、バニラ農業と生物多様性の関係を調べるために、マダガスカルで、樹木類、草本植物、鳥類、両生類、爬虫類、チョウ類、アリ類を調査し、バニラの混農林(森林の中あるいは休閑地に作られる)での収量を調べた。また、地元のバニラ農家に対し、バニラ農業のやり方についての聞き取り調査も行った。Wurzたちは、森林の中に作られたバニラの混農林では、老齢林と比べて種数が23%少なく、固有種数が47%少ないことを明らかにした。これに対して、休閑地をバニラの混農林として利用すると、休閑地と比べて種数が12%多くなり、固有種数が38%多くなることが分かった。
Wurzたちは、バニラのアグロフォレストリー(混農林業)によって荒廃地と休閑地の生物多様性を回復できる可能性のあることが、今回の研究で得られた知見によって明確に示されているという考えを示している。Wurzたちは、休閑地に混農林を植林することで、マダガスカルの生物多様性を守りつつ、農民の生計を確保し、天然林を混農林に転換する圧力を緩和することができるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-30866-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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