気候変動:北大西洋のハリケーンシーズンの幕開けが早くなってきている
Nature Communications
2022年8月17日
1979年以降、北大西洋のハリケーンシーズンにおいて最初のハリケーンが発生した日が、10年間で約5日ずつ早くなっていることを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。また、今回の研究では、命名されたハリケーンが各シーズンに米国に初めて上陸した日が1900年以降、10年間で約2日ずつ早くなっていることが示唆された。これらの知見は、計画立案と適応戦略の向上にとって重要だ。
現在の北大西洋のハリケーンシーズンの定義は1965年に確立され、6月から11月までと決められた。北大西洋地域で発生するハリケーンの大部分は、この期間中に入るが、ハリケーンシーズンについては、これ以上正確な定義がなされておらず、最近では、ハリケーンシーズンが正式に始まる6月1日より前にいくつかの熱帯低気圧が発生している。
今回、Ryan Truchelutたちの研究チームは、観測データを用いて、1979~2020年の大西洋での熱帯低気圧の活動開始と1900~2020年の米国におけるハリケーン上陸リスクの開始の変化傾向を分析した。その結果得られた知見は、北大西洋でシーズン初の命名されたハリケーンの形成期が、1979年以降、10年間に5日以上のペースで早くなっていることを示している。また、Truchelutたちは、各シーズンについて、命名されたハリケーンが米国に初めて上陸した日が1900年以降、10年に約2日ずつ早くなっているという見解を示しており、このように最初の発生日が前倒しになる傾向が、同時期に同じような前倒し傾向を示している西大西洋での春の温度上昇に結びついている可能性があることも指摘している。
Truchelutたちは、今回の研究で得られた知見が、北大西洋のハリケーンシーズンの始期を6月1日以前として経験的に定義できるかもしれないことを示していると結論付けており、海洋温度のさらなる上昇は、熱帯低気圧の形成期を前倒しして、人口密度の高い陸塊での熱帯低気圧への曝露を深刻化させる可能性があるという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-022-31821-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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