環境:地球上の森林の生物多様性を守る
Nature
2022年8月18日
世界の森林生態地域での保全投資に関して、最も適した地域と時期を個別に判定することによって、世界の森林で保護される植物種の数を最大化するという方法を記述した論文が、Nature に掲載される。今回の研究で得られた知見は、対象を慎重に絞り込んだ投資を行うことで得られる可能性のある保全上の利益を明確に示している。
森林には既知の陸生動植物種の大多数が生息しているため、森林破壊は、生物多様性にとって大きな脅威となっている。1990年以降、森林破壊による森林面積の減少が、世界全体で4億2000万ヘクタールに達したが、これは主に農業の拡大によるものだった。資源に限りがあるため、森林保全を実施することが最適な地域と時期を決定することは、依然として難しい課題となっている。
今回、Ian Lubyたちは、年間予算10億ドル(約1300億円)で、今後50年間に全世界の森林生態地域(独特の気候、植物群落と動物群集を特徴とする地域)の植物種を保護するために、保全活動をいつ、どこに集中させるべきかを決定するという課題を動的最適化法によって実行した。動的最適化法には、保全計画のためのいくつかの考慮事項(種の豊かさ、保全コスト、現在の保護レベル、森林破壊率、各生態地域での再植林の可能性など)が含まれていた。その結果判明した最適な解決策は、保全予算を設定しない場合より2万3680種多く保護でき、458か所の森林生態地域のうち127か所で森林を保護することが明らかになった。この戦略では、まず、保全コストが低く、さらなる森林破壊が種の大幅な減少につながると考えられる数少ない生態地域を対象とし、将来的には、保全活動をもっと多くの生態地域に広げて、一次林の保護の拡大と再植林の両方に投資すべきだとされる。そして、種の保全によって最大の利益を享受するのは、生物多様性が豊かだが、財政的に貧しい地域(メラネシア、南アジア、東南アジア、アナトリア半島、南米北部、中米など)であることが判明した。
Lubyたちは、それぞれの地域の知識と能力、その国の政府からの支援、世界的な優先順位付けの取り組みを集積すれば、自然保護の取り組みに投資された時間と資金を確実に有効利用できるようになると主張している。
doi:10.1038/s41586-022-05096-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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