医学研究:1型糖尿病の青年に役立つかもしれないインスリン送達システム
Nature Communications
2022年8月31日
概念実証を目的とした予備研究が実施され、ハイブリッド型クローズドループ技術を搭載したインスリン送達システムが、1型糖尿病の青年の高血糖と血糖変動を抑制し、脳の発達と認知機能を改善できる可能性のあることが判明した。この知見は、42人の青少年が参加した予備研究の結果に基づいており、このシステムが1型糖尿病の小児の診療にどのように役立つのかを探究するためには、さらなる研究が必要とされる。今回の研究結果について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
1型糖尿病の小児の血糖値管理には困難を伴う場合がある。標準的な臨床ケアは、血糖値を正常値近くに維持することだが、これを実際に達成するのは容易でない。1型糖尿病は、小児の脳の構造と機能の変化に関連しているが、影響の程度は十分に解明されていない。
今回、Allan Reissたちは、8歳になる前に1型糖尿病と診断された14~17歳の青年42人を対象として、概念実証を目的とした予備研究を実施し、ハイブリッド型クローズドループ技術を搭載したインスリン送達システムを使用する場合と標準的な糖尿病治療(オープンループのインスリンポンプの使用又は1日複数回のインスリン投与)を6か月間にわたって比較した。これらの青年被験者は、研究期間の前後に認知機能評価とマルチモーダル脳イメージングを受けた。ハイブリッド型クローズドループシステムを使用した青年は、他の評価対象の治療法を受けた青年と比較して、高血糖と血糖変動が抑制されており、それと同時に、脳の構造と機能の測定基準の値の一部に変化が見られ、標準知能指数が向上した。Reissたちは、以上の結果に基づきハイブリッド型クローズドループシステムを使用した青年の脳の発達の軌跡が、神経学的機能が正常な者の軌跡に近づいたという見解を示している。
Reissたちは、今回の研究結果が、小児の生涯を通じて厳格な血糖コントロールが重要であることを示しており、ハイブリッド型クローズドループシステムがこれに役立つ可能性があると主張する一方で、このシステムと青年期の脳の発達についてのさらなる研究が必要な点に注意を要すると指摘している。
doi:10.1038/s41467-022-32289-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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