古生物学:初期恐竜の分布を形作った気候帯
Nature
2022年9月1日
最初期の恐竜の生息地は、古代のパンゲア超大陸の極南部の温帯地域に限られていたことが、ジンバブエで新たに出土した三畳紀の恐竜の化石群から示唆された。この知見は、パンゲア超大陸全体における恐竜の起源と初期進化に関する知識が深めている。この研究知見を報告する論文が、Nature に掲載される。
高温気候、強い季節性と高い大気中CO2濃度のために、パンゲア超大陸を東西に横切る強い乾燥気候帯と湿潤気候帯が形成されたことが、先行研究で示唆されている。その当時、動物の分散に影響を与える地理的障壁や大陸境界がほとんどなかったため、これらの気候帯が、パンゲア超大陸における初期恐竜の分布に影響を与えた可能性がある。しかし、サンプリングが不十分で最初期の歴史が明確にならないため、後期三畳紀のパンゲア超大陸全体での恐竜の分布を解明することは、困難な課題となっていた。
Christopher Griffinたちは、新たな恐竜化石群をジンバブエで発見し、年代測定により、後期三畳紀(約2億3000万年前のカルニア期)のものと決定した。この化石群には、アフリカで最古のものとされる恐竜の化石が含まれており、首の長い草食恐竜の一種である竜脚類の新種Mbiresaurus raathi のほぼ完全な骨格も含まれていた。Griffinたちは、このアフリカ中南部の化石群が、南米(ブラジルやアルゼンチンを含む)とインドで発見された恐竜化石群に似ていることを明らかにした。このことは、似通った脊椎動物がこの緯度帯に広く分布していたことを示唆している。これらの恐竜の分布は、気候障壁と相関することが判明し、Griffinたちは、パンゲア超大陸の他地域への恐竜の分散は、こうした気候障壁が緩和するまで先送りされたという考えを示している。
Griffinたちは、陸生恐竜と今日まで生き残っているものが多い他の主要な動物分類群(哺乳類、カメ類、両生類、爬虫類など)の初期構成が、気候による制御の影響を受けていたという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-022-05133-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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