環境:使用済みの漁具が北太平洋ゴミベルトを形成している
Scientific Reports
2022年9月2日
北太平洋ゴミベルトに浮遊しているプラスチック廃棄物の大半は、少数の先進漁業国からやって来ていることを報告する論文が、Scientific Report に掲載される。この研究知見は、漁業が、海洋プラスチック汚染問題の原因の一端を担い、この問題を解決するという点で重要な役割を果たすことを明確に示している。
北太平洋ゴミベルト(NPGP)とは、北太平洋亜熱帯環流(海流系)の領域で大量のプラスチックが浮遊している状態をいう。これまでの調査では、漁網、ロープとそれより大きなプラスチック片が、この海域の浮遊物の最大4分の3を占めている可能性のあることが示唆されている。
今回、Laurent Lebretonたちは、2019年6〜11月に行われた調査で北太平洋亜熱帯環流から採集された573キログラムのプラスチック屑(6093個の5センチメートル以上の屑)を分析した。プラスチック屑は、北緯33.0~35.1度、西経143.0~145.6度の海域で採集された。そして、排出国を示す証拠(言語、会社名、ロゴなど)がないかどうかを調べるため、プラスチック片の検査が行われた。また、Lebretonたちは、海流データを用いて、この海域にプラスチック屑が流入した過程をモデル化した。
プラスチック屑の33%は識別不能な破片だったが、2番目に多かった物体(26%)は漁具(魚箱、カキスペーサー、うなぎとり)だった。また、プラスチック製のフロートとブイが物体の3%を占め、総質量の21%を占めていた。Lebretonたちは、232個のプラスチック製の物体について排出国を特定することができ、日本33.6%(78個)、中国32.3%(75個)、韓国9.9%(23個)、米国6.5%(15個)、台湾5.6%(13個)、カナダ4.7%(11個)だったと報告している。また、Lebretonたちのモデルによれば、NPGPのプラスチック屑は、漁業活動によって発生した可能性が陸上での活動の場合の10倍以上高いとされた。Lebretonたちは、プラスチック屑の原因の一端を担っていることが明らかになった国のほとんどで、漁業が工業化されている点を指摘している。
Lebretonたちは、以上の知見は、漁船内の廃棄物管理の規制と海洋投棄された漁具の監視における各国間の協力強化と漁業の透明性が必要なことを明確に示していると考えている。
doi:10.1038/s41598-022-16529-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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