社会科学:米国内で一般に見られる大学教員採用の不平等
Nature
2022年9月22日
米国の大学教員の大半は、米国内の数少ない名門大学の博士号取得者であることを明らかにした研究論文が、Nature に掲載される。この知見は、米国内で博士号(PhD)を授与している大学全ての約10年分の新規雇用・継続雇用データを分析して得られたもので、衡平性を高め、多様性をより適切に反映させるための取り組みの指針となる可能性がある。
大学スタッフの新規雇用と継続雇用は、米国内の大学の労働力を形作る上で非常に重要であり、教育、キャリア、研究課題に直接影響を与え、究極的にはアイデアの拡散にも影響を与える。しかし、限られたデータしかないため、分野や大学の垣根を超えて長期にわたって存在している可能性のある新規雇用・継続雇用の動態の一般的なパターンを定量化できていない。
今回、Daniel Larremoreたちは、米国内で博士号を授与している大学全てにおける2011年から2020年までの教員(368大学の1万612学部で採用された29万5089人)の新規雇用と継続雇用を調べた。Larremoreたちの分析で、米国内に一般に存在する不平等とピラミッドの険しい社会階層の両方が明らかになった。例えば、米国内で教育を受けた教員の80%が博士号を取得した大学は、全大学のわずか20.4%だった。また、博士号を取得した大学よりも名声の高い大学に勤務している教員は、専門領域(例えば自然科学)や専門分野(物理学や生態学など)にもよるが、わずか5~23%で、大学における社会的流動性の欠如を反映している。さらに、今回の研究の対象だった研究領域(8領域)の全てと研究分野(107分野)の75%で、過去10年間に女性の存在が大学教員数により適切に反映されるようになったが、この統計値が、新規雇用された教員に占める女性の割合に反映されていない。Larremoreたちは、女性の存在が大学教員数により適切に反映されるようになったのは、退職した教員に占める男性の割合が不相応に大きかったためとしている。
Larremoreたちは、以上の研究知見が、米国内で大学教員の新規雇用と継続雇用の不平等が一般に見られることを明らかに示していると結論付け、この不平等を是正する戦略を改善するためには、今後の研究によって不平等の根底にある原因を解明することが必要だと力説している。
doi:10.1038/s41586-022-05222-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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