薬理学:有効性が期待される新しい抗うつ薬を仮想薬物スキャンによって特定する
Nature
2022年9月29日
マウスにおいて、LSDに似た化学分子(2種類)が抗うつ作用を示し、副作用(幻覚)がなかったことを報告する論文が、Nature に掲載される。これらの化学分子がヒトに投与する薬剤候補となるためにはさらなる試験が必要だが、これらの分子の発見は、将来の精神疾患治療薬の開発につながる可能性がある。
幻覚剤(LSD、サイロシビンなど)は、特定のセロトニン受容体を標的とすることが知られており、精神疾患(統合失調症、うつ病、不安症など)の治療薬として提案されている。しかし、これらの化合物を幻覚活性のない治療薬として開発できるかどうかは分かっていない。幻覚活性のないLSD様治療薬の開発は、精神疾患の治療で注目されている目標だ。仮想スクリーニングは、薬物活性を予測するための計算的手法で、セロトニン受容体を標的とする興味深い化合物を見つけるために利用できる。
今回、Brian Shoichet、Jon Ellman、Bryan Rothたちは、LSDにも存在するテトラヒドロピリジンのファミリーに含まれる7500万種以上の分子が登録された特注の仮想ライブラリーを作成し、セロトニン受容体と相互作用するかどうかを仮想的に検証した。その結果、セロトニン受容体を活性化する2種の分子が見つかり、それらの分子をマウスで検証した。これらの分子は、マウスにおいて抗うつ作用を示し、幻覚作用はないことが分かった。さらに、これらの分子は、抗うつ薬のフルオキセチンと同等の効果を示し、用量はフルオキセチンの40分の1だった。Shoichetたちは、これらの分子を薬剤候補と見なすには、さらなる研究と最適化が必要だと指摘している。
今回の知見は、新薬のリード化合物を特定するための特注スクリーニングライブラリーの有用性を実証している。
doi:10.1038/s41586-022-05258-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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