微生物学:地球の陸生微生物を絶滅から守る
Nature Microbiology
2022年10月4日
土壌環境に生息する微生物の多様性を保存し、修復し、管理して絶滅を防ぐためには、行動を起こす必要があると述べたPerspectiveが、今週、Nature Microbiology に掲載される。この論文では、微生物は地球の生命を支える重要な役割を担っており、緊急な保護が必要だと強調されている。
微生物は、地球のあらゆる生命の生存と多様性に不可欠な存在である。世界的な生物多様性の喪失と大量絶滅に対抗するためにマイクロバイオームを用いることはこれまでにも議論されてきたが、微生物の多様性が脅かされている可能性については、これまであまり注意が向けられていなかった。
Colin Averillたちは今回、土壌の菌類のマイクロバイオームを例として、地球の微生物多様性の喪失を防ぐ戦略を示している。この戦略は、「保存」「修復」「管理」という3つのアクションプランを組み合わせてできている。保存とは、最も危機にある地域や種を見つけ出すために現在の土壌微生物の多様性を詳しく記録することの必要性を示しており、例えば、アフリカ大陸全体で、土壌の菌類の多様性データが不十分であることが分かった。修復では、すでに多様性が失われている微生物生態系を再構築する道筋を検討する。これを分かりやすく示すため、著者たちが、既報の80の研究のメタ解析を行ったところ、ある環境に元から生息している菌類を加えた土壌では、植物の成長が平均64%も早まることが分かった。管理については、食料生産や林業に利用される土地(地球上で植物が生育している土地の大半を占める)は微生物多様性を推進、保護するための標的として有望だと述べている。
著者たちは、世界中の科学者や保存、修復プロジェクトや組織に関わる関係者、さらには小規模、大規模な農業、林業従事者たちに、地球の微生物叢を絶滅から守るため、今すぐ行動しようと呼び掛けている。
doi:10.1038/s41564-022-01228-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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