環境:スムシの唾液からプラスチック分解酵素が見つかった
Nature Communications
2022年10月5日
ポリエチレンプラスチックを酸化し、分解する能力を有する可能性のある酵素がスムシの唾液中に見つかったことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、プラスチック廃棄物の問題に対処するための解決策の開発に役立つかもしれない。
プラスチック汚染は重大な環境問題と考えられており、合成プラスチックの生産量の約30%をポリエチレンが占めている。ポリエチレンは生物学的手法によって分解できるが、そのためには一般に(例えば、熱や放射線を使用した)過酷な非生物的前処理を行って、分解過程を開始する必要のあることが先行研究によって明らかになっている。ポリエチレンの分解は、一部の微生物によっても達成されるが、これは非常にゆっくりとした過程であり、数カ月を要することがある。ポリエチレンを分解する酵素は同定されていない。
今回、Federica Bertocchiniたちは、ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)の幼虫であるスムシの唾液を研究し、スムシの唾液がポリエチレンを分解することができ、これによってポリエチレンが、より小さな分子に分解されることを示した。Bertocchiniたちは、この唾液に含まれる全てのタンパク質を分析し、このポリエチレンの分解を再現できる2種類の酵素を同定し、これらの酵素を、ギリシャ神話とローマ神話に登場する農業の女神にちなんで、デメテルとケレスと名付けた。Bertocchiniたちは、これらの酵素を用いて、ポリエチレンの分解を可能にする初期酸化が、室温において数時間で達成されることを明らかにした。
Bertocchiniたちは、これらの酵素がプラスチック部品のアップサイクリングだけでなく、プラスチック廃棄物の分解にとっての新しい方法をもたらすかもしれないという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-022-33127-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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