生態学:マラリア蚊が乾季を生き延びる手立て
Nature Ecology & Evolution
2022年10月7日
アフリカの西部サヘル地域の蚊は、「夏眠」として知られる休眠状態に入ることによって乾季を生き延びえているとみられることを示した論文が、Nature Ecology and Evolution に掲載される。今回の知見は、マラリアを抑制するための公衆衛生的介入に意味を持つと考えられる。
マラリアの患者と死者はアフリカが世界全体の94%を占めており、マラリアを媒介する蚊がどのように生存しているのかを解明することが重要である。ハマダラカの1種Anopheles coluzziiにとって西部サヘル地域の長い乾季は生息しにくいはずであるが、雨季の初めには、新世代の出現ではあり得ない早さで成虫が再び姿を現す。これまで、雨季の開始から数日での出現は、長距離移動と夏眠によって説明されてきたが、夏眠の証拠は大半が状況証拠であり、マラリア蚊の生存への相対的寄与に関する推定は行われていなかった。
乾季の蚊の生存で夏眠が果たしている役割を探るため、Roy Faiman、Alpha Seydou Yaroたちは同位体の重水素を利用し、繁殖期にマリの2つの村で蚊の幼虫を標識した。7か月にわたる乾季の後に成虫を採取した結果、成虫個体群の約20%が同位体で標識されていることが明らかになった。このことは、局地的な夏眠が行われ、それが雨季のはじめの蚊の個体群に寄与していることを示唆している。
今回の知見について、論文の結びでは、乾燥した生息地で蚊がどのように生存しているのかを理解するのに役立つとともに、蚊を駆除してマラリアを撲滅する戦略に重要な意味を持つ可能性があると論じられている。
doi:10.1038/s41559-022-01886-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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