環境:末端消耗による氷河の氷質量損失の定量化
Nature Communications
2022年10月12日
2010年から2020までの間に北半球の約1500か所の氷河(グリーンランド氷床を除く)から年間合計52ギガトンの氷が末端消耗によって失われたという推定結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、一部の地域で、末端消耗プロセスの方が融解よりも氷河の質量損失を強力に制御していることを示唆しており、海面水位上昇の評価や末端消耗プロセスが発生するホットスポット地域の特定にとって重大な意味を持っている。
氷河の質量損失は、いろいろなプロセスを経て発生している。末端消耗(氷山の分離を含む)は、氷河によって氷が海洋に流出するメカニズムを指し、氷床表面の融解とは無関係だ。しかし、これまでの研究では、末端消耗の一部のタイプについての計算しか実行されていない。
今回、William Kochtitzkyたちのは、2000年から2020年までの末端消耗の役割を評価するため、北半球においてグリーンランド氷床とは別の約1500か所の海洋末端氷河を特定し、氷厚、表面流速、末端位置の変化の測定値または推定値を組み合わせて、一部の地域で末端消耗が質量損失の最大の要因となり得ることを明らかにした。Kochtitzkyたちは、2000年から2020年までの氷の流出量が約2.10ミリメートルの海面水位上昇に相当し、2010年から2020年までの末端消耗が、海洋への年間約52ギガトンの氷の流出の一因だったと述べた。また、Kochtitzkyたちは、末端消耗プロセスの影響を受けた地域を評価し、ホットスポットである可能性のある地域と海洋生態系への影響を明らかにして、最も影響を受けた沿岸地域として、ロシアの北極圏、スバールバル諸島、アラスカなどを挙げている。
doi:10.1038/s41467-022-33231-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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