古代人類:現生人類とネアンデルタール人の両方が存在した期間が推定された
Scientific Reports
2022年10月14日
フランスとスペイン北部では、ネアンデルタール人が絶滅するまでの1400年から2900年の間、現生人類とネアンデルタール人の両方が存在していた可能性があることを示す推定結果が明らかになった。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。これはモデル化研究によって得られた知見であり、この地域に2種の人類が存在していたことに関する知識が深まった。
ヨーロッパでは、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)が絶滅するまでの5000年から6000年間にわたって、現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人の両方が存在していた可能性のあることが、最近の化石証拠から示唆された。しかし、現在のところ、この2種の人類が同時代に存在していたことを示す地域レベルの証拠がほとんどなく、これらの地域でホモ・サピエンスが出現した時期とネアンデルタール人が絶滅した時期を確定することは難しい。
今回、Igor Djakovicたちは、フランスとスペイン北部の17か所の考古遺跡で出土した合計56点のネアンデルタール人と現生人類の人工遺物(28点ずつ)のデータセットと、さらに同じ地域から発掘されたネアンデルタール人の標本(10点)を分析した。全てのサンプルは、2000年以降、強力な最新技術を用いて放射性炭素年代測定が行われており、より正確な測定になっている。
Djakovicたちは、最適線形推定モデル化とベイズ確率モデル化を用いて、これらのサンプルとそれに関係するヒト集団の年代範囲を推定し、これらのヒト集団が考古遺跡に存在していたかもしれない最も早い年代と最も遅い年代を推定した。このモデル化は、年代推定を妨げる考古学的記録の欠落部分を埋める役割を果たした。
Djakovicたちは、このモデル化に基づいて、ネアンデルタール人の人工遺物が最初に出現したのは今から4万5343~4万4248年前であり、消滅したのは3万9894~3万9798年前だと推定している。また、ネアンデルタール人の遺体の直接的な年代測定に基づいて、ネアンデルタール人が4万870~4万457年前に絶滅したとされた。現生人類が最初に出現したのは4万2653~4万2269年前と推定された。Djakovicたちは、以上の結果は、これら2種の人類の両方がこの地域に1400年から2900年間にわたって存在していたことを示唆していると結論付けている。しかし、今回の研究の結果には、現生人類とネアンデルタール人の間に交流があったのかどうか、あるいはどのような交流があったのかという点は示されていない。
doi:10.1038/s41598-022-19162-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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