COVID-19: COVID-19以降の平均余命の変化
Nature Human Behaviour
2022年10月18日
2020年に全球で平均余命が短くなった後、2021年には西ヨーロッパの7か国で完全とは言えないまでも有意な延長が認められた一方、米国、チリ、大半の東ヨーロッパ諸国では平均余命の短縮が続いていることを明らかにした論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。29か国の調査から明らかとなったこの相反する傾向は、2021年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)による影響が、一部の国で他の国に比べていかに大きかったかを示している。
平均余命は人口全体の健康状態を示す有用な指標であり、国の間で集団健康を比較するために使用されることが多い。2021年の平均余命の変化は、国によって異なる、薬剤によらない介入やワクチン接種の影響を反映している可能性がある。
Jonas Schöleyたちは今回、2015~2021年の29か国の死亡に関するデータを用いて平均余命の変化を見積もった。その結果、対象国のうち4か国(フランス、ベルギー、スイス、スウェーデン)では、平均余命は2021年にパンデミック前の水準に回復したことが分かった。他の西ヨーロッパ諸国では2021年にある程度の回復が見られたが、米国、チリ、東ヨーロッパ諸国(平均余命の上昇が不完全だったスロベニアを除く)では平均余命の短縮が続いている。死亡率を年齢層別に解析した結果、各国のCOVID-19による死亡は2020年より2021年において、若年層(60歳未満)で生じる傾向があることが認められた。研究チームはまた、2021年10月の時点でワクチン接種を完了している集団の割合についても解析を行い、平均余命の短縮がワクチン接種率の低さと相関していることを見いだした。
著者たちは、複数の国において、過去70年に例を見ない平均余命の短縮が続いていることを考えれば、国によっては長期に及ぶ健康危機がみられる可能性が残っていると結論している。
doi:10.1038/s41562-022-01450-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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