物理学:しなびてゆくパッションフルーツがロボット設計のヒントになるかもしれない
Nature Computational Science
2022年10月25日
水分が抜けてきたパッションフルーツの表面に形成される未知のタイプの皺のパターンに関する論文が、Nature Computational Science に掲載される。今回の発見と、そこから導き出される理論的予測は、物体のサイズや形状の非線形的で自然な変化の背景にある複雑な物理現象に関する理解を深め、適応ロボティクスの新たな設計に役立つことが期待される。
皺は、ものの表面に自然に生じる変化のパターンの中で最も重要なものの1つであり、生物の一生を通じて、さまざまな程度で形成される。理論的には、胚や腫瘍や脳などの成長過程で対称性が自発的に破れたり、果物や皮膚などから水分が失われたりすることが要因となって、複雑な皺が形成される。このような構造変化を正確に予測し、精密に制御することは、ナノデバイスの作製時などにおいて技術的に極めて重要な意味を持つ。
Fan XuおよびXi-Qiao Fengたちは今回、水分を失ったパッションフルーツの表面に、未知のタイプのキラルな皺形成パターンを発見した(キラルな対称性とは、物体に鏡映対称性はないが、回転対称軸はあるかもしれないことをいう)。著者たちは、この配列に着想を得て力学モデルを構築し、これを使って普遍的スケーリング則を導出して、バッキーボールパターン(六角形と五角形など)やキラルモード(左回転または右回転など)の形成の基礎にある構造–弾性機構を明らかにした。著者らはさらに、このキラルな皺形成過程が、実験室で作製したシリコンのコア–シェル構造体の表面で模倣できることを示した他、キラルなパターンの局所感度の高さを利用して、ダイヤモンドやネジや緑豆などの小さな物体を把持できる自己適応型ロボットも設計した。
この研究は、水分を失ってしなびてゆくパッションフルーツの表面の構造変化を説明し、予測するだけでなく、自然界で観察されるキラルな皺の配列にヒントを得て、目標物の性状に合わせた方法でこれを把持する適応型ロボットの開発を促すものである。
doi:10.1038/s43588-022-00332-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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