進化学:脊椎動物における音声コミュニケーションの起源の推定
Nature Communications
2022年10月26日
これまで無発声動物と考えられていた53種の動物の発声を初めて録音した記録について報告する論文がNature Communications に掲載される。今回の研究では、この録音記録に基づいた分析が行われ、鼻呼吸をする脊椎動物の音声コミュニケーションの起源が、約4億700万年前の共通祖先である可能性が示唆されている。
音声コミュニケーションは、多くの脊椎動物の行動(子育てや配偶者の誘引を容易にするための行動など)の基盤をなしている。以前の研究で、音声コミュニケーションが、いくつかの分類群で独立して進化したことが示唆されていたが、この適応に共通の起源があったという可能性は、十分に解明されていない。系統発生解析を行うと、音声コミュニケーションの進化的起源に関する知見が得られるが、これまでの試みでは、カメやその他の爬虫類などの主要な動物種が無発声動物(音声によるコミュニケーションができない)と考えられていたためにその音声録音が研究に用いられなかった。
こうした動物の音声コミュニケーション能力を評価するため、今回、Gabriel Jorgewich-Cohenたちは、4つの脊椎動物クレード(カメ、ムカシトカゲ、アシナシイモリ、ハイギョ)の53種について、音声録音と行動記録を実施した。その結果、記録された全ての動物種が、多様な音声レパートリーを有しており、一定種類の音(チーッチーッという音、カチッという音や複雑な音色など)を発することが判明した。次に、これらの記録が、魚類以外の脊椎動物の全ての分類群(1800種)の音声コミュニケーションの進化史に関するデータと結合された。Jorgewich-Cohenたちは、こうした分析に基づいて、鼻呼吸する全ての脊椎動物については、音声コミュニケーションの共通起源が約4億700万年前にあったという考え方を示している。
今回の研究によって得られた知見は、音声コミュニケーションの起源に関する手掛かりとなり、多様な動物分類群における音声コミュニケーションに関する知識を深めている。
doi:10.1038/s41467-022-33741-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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