気候政策:グローバル化によって期待される太陽光エネルギーの価格低減
Nature
2022年10月27日
太陽電池のサプライチェーンを世界的に統合することが、太陽光エネルギーの価格引き下げに役立つ可能性があるとした研究結果が発表される。サプライチェーンをグローバル化すれば、国外の太陽電池(太陽光発電モジュール)メーカーからの供給を制限するという国内化方針と比べて、設置費用を数十億米ドル節約できるかもしれないことが今回の研究で示唆された。この研究を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
再生可能エネルギー産業による経済成長と雇用の利益を国内に取り込むことを目指す政策を実施して、国内での再生可能エネルギー生産を支援している国が多い。しかし、世界の炭素排出量を十分な規模で削減するためには、再生可能エネルギーを迅速かつ広範囲に配備する必要があり、そのため費用対効果が高いことが必要となっている。
今回、Gang Heたちは、主要市場において供給構造を国内化した場合とグローバル化した場合で太陽電池の配備コストを比較した。Heたちの計算によると、2008年から2020年の間に、太陽電池市場のグローバル化によって、太陽電池の設置者は、米国で240億米ドル、ドイツで70億米ドル、中国で360億米ドルを節約できた。また、国内のメーカーに依存する政策では、サプライチェーンをグローバル化する場合と比べて、2030年に太陽電池の価格が20~25%高くなるという予測結果も得られた。
今回の研究では、太陽電池の完全国産化を行う場合との比較で、サプライチェーンの世界的統合によるコスト削減が初めて定量的に推定された。Heたちは、気候政策において、再生可能エネルギー産業からの利益の分配と、サプライチェーンのグローバル化を通じてコストを大幅に削減できる可能性のある方法の両方を考慮に入れるべきだと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05316-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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