気候変動:外温動物にとっては気温1度の違いが大事
Nature
2022年10月27日
気候変動が外温動物(冷血動物)の熱ストレスと死亡のリスクを高めていることを示唆した研究について報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究では、中程度の温暖化シナリオでも顕著な影響が生じると予測されており、地球温暖化がもたらす動物の脆弱性を浮き彫りにしている。
外温動物の体温と生化学的過程の調節は、外的要因に依存している。その結果、外温動物の生息地は、許容温度範囲内の地域にほぼ限定されている。外温動物は、ストレスのかかる温度にある程度耐えられるが、その耐性には、熱ストレスの持続時間と強度に応じた限界がある。
今回、Johannes Overgaardたちは、外温生物の温度感受性を評価するため、314種の外温生物(魚類、アリ、ショウジョウバエを含む)の酵素活性、心拍数、移動運動、摂食と代謝速度に関するデータを解析した。その結果、外温生物種がストレスを感じ始める温度になると、温度が許容範囲内にある場合と比べて、温度上昇の影響がはるかに大きくなることが判明した。Overgaardたちは、外温生物(112種)のデータを用いて、温度が1°C上昇すると、熱昏睡や熱死を引き起こす過程の速度が100%以上も上昇することを明らかにした。
地球温暖化が進んで、外温生物が極端な高温にさらされた時、この極端な温度感受性が外温生物にもたらす結果は警戒すべき規模になるかもしれない。将来的に環境温度の最高値が上昇した時に回避行動がなければ、2100年の時点で、暑熱障害の発生が、陸生の外温生物で774%増加し、水生の外温生物で180%増加する可能性があるのだ。Overgaardたちは、この知見は、中程度の地球温暖化シナリオであっても、潜在的な影響を過小評価している可能性があることを示唆している、と結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05334-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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