気候科学:コンゴの泥炭地で気候が乾燥化したために炭素放出が起こっていた
Nature
2022年11月3日
今から約5000~2000年前にコンゴ盆地中央部の気候が乾燥化したことが原因となって(湿地帯の)泥炭が分解して炭素が放出されたことが研究によって示唆された。この知見は、これらの湿地の炭素貯蔵能力が気候変化の影響を受けた過程を浮き彫りにしている。この研究について報告する論文が、Natureに掲載される。
コンゴ盆地中央部の森林湿地は、世界最大の熱帯泥炭地複合体であり、約300億炭素トン(地球の熱帯泥炭地の炭素貯蔵量の28%)が貯蔵されている。しかし、この生態系の歴史については、ほとんど分かっていない。この歴史を理解することは、コンゴの泥炭地が気候変動に対してどの程度脆弱であるかを判定する際に役立ち、森林の伐採・搬出、石油探査、農業などの活動がもたらすリスクを評価する政策にとって有益な情報を提供できる可能性もある
今回、Yannick Garcinたちは、過去の気候変化に対するコンゴ共和国中央部の泥炭地の応答を評価するためにコンゴの大型盆地から採取した泥炭コアを分析した。その結果、泥炭の蓄積が少なくとも1万7500年前に始まったと考えられ、約7500〜2000年前には泥炭の蓄積が少なくなり、泥炭の分解が、その前後の時代の泥炭と比べて、はるかに多かったことが明らかになった。また、植物物質の分析が行われて、この時期、特に5000〜2000年前の間に乾燥傾向があったことが示された。Garcinたちは、気候の乾燥化のために地下水位が低下し、これが泥炭の分解を引き起こしただけでなく、気候の乾燥化が始まる前に蓄積された泥炭炭素の損失もあったという考え方を明らかにした。しかし、泥炭地は、その後2000年間の回復期を経て、再び炭素吸収源に戻った。
Garcinたちは、以上の結果は、コンゴ盆地中央部が全球炭素循環の正のフィードバックに関与している可能性を示唆しており、人為起源の気候変動によってコンゴ盆地での干ばつが増えるようなことがあれば、泥炭から大気中に放出される炭素の量が増えるかもしれないと指摘している。
doi:10.1038/s41586-022-05389-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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